カテゴリー:土木遺産
KINSOKU お仕事図鑑

俺の土木遺産-07|安治川トンネル

《 第 7 話 》
俺が閉鎖空間でぽっぴんジャンプするわけがない!

ごきげんよう、卒業と同時に国家資格〔測量士・測量士補〕が取得できる近畿測量専門学校(国土交通大臣登録校)です。
今回は、連載企画「俺の土木遺産がこんなに楽しいわけがない。」です。

※ このページの最下部に、アーカイブがあります。
※ この連載は、平成26(2014)年度のメールマガジン登録者向けweb連載を再編集したものです。

今回は大阪臨海部です

さて、今回は安治川トンネルをご紹介しましょう。

早速、地理院地図で場所を確認しましょう。
大阪市此花区と西区にまたがる、阪神なんば線 安治川橋梁(九条・西九条間)すぐ西側に安治川トンネルがあります。
そして、見てください!
近隣の小中学校内に、「-1.4」と注記がつく水準点があります。

※ 備考
ここで紹介する写真は、2005(平成17)年10月に撮影したものです。
また、写真の無断転載はご遠慮ください。

トンネルになった理由

安治川は大阪市西部にある河川です。
昭和初期、ここには渡船(源兵衛渡)がありましたが、経済発展の支障ともなっていました。
橋を架ける案が出ましたが、上流部の倉庫街へ、1日最大2,500隻、最大1000トン級の貨物船が通過することがあったので、橋を架けるためには水面から30m以上の余裕を求められていました。

安治川トンネル北側建屋

そこで、検討の結果、トンネルをつくることとなりました。
しかも、取付け部はスロープではなく、用地を最小限にできるエレベータ式という珍しい方法を採用することとなりました。
上の写真では左側の大きな庇の下がエレベータ入口でした。

元車両用エレベータ部分

普通車・中型車なら1台、小型車なら2台積載、1時間に15往復できる大型エレベータを2基を設置。
自動車はエレベータで下りてトンネルを自走し、エレベータで上がるというものでした。
エレベータのかごは、車道部廃止時に撤去されています。

閉鎖された車道部

このトンネルは、高さ7m、幅14m、長さ49.2m、重量約4500トンの鉄筋コンクリート製の箱を川底に沈めて両端とつなぐという「沈埋式」を日本初採用
しかも、1935(昭和10)年着工、1944(昭和19)年完成という戦時中に施工したことが特徴です。
これらにより、2016(平成18)年、選奨土木遺産となりました。

トンネル内部は、幅4.5mの車道2車線と幅2.4mの歩道部で構成。
歩道部は、現在でも多くの人の生活路として利用されています(24時間通行可能)。

旧車道部はほぼ廃止当時のまま

一方、車道部分は、交通量の増大に対応できなくなって1977(昭和52)年に閉鎖。
周辺に幹線道路(国道43号)が完成したことも一因でした。
(橋梁化(スロープを建設)するため、車道部が廃止になったという説もあります。)
エレベータ出入り口部分が開口部として残る閉ざされた空間・・・そう、閉鎖空間なのですっ!

この空間に価値を見出す

ここを見学させていただいたとき、大阪市の担当者は「なにかに利用できないか」と思案していました。
河底であるため、平均気温が15度、湿度もほぼ一定(ただし、やや高め。)だといいます。
車道部は未使用ですが歩道部が現役のため、耐震工事も施工済みであるとのこと。

未使用の車道部

70年以上前のトンネルが利用できるのは、その場所を正確に測量し、測量結果に基づいて設計し、設計図面に基づいて施工が行われているからこそ。
大阪の経済を支えたトンネルをこのまま時間の流れに任せておくのではなく、有効利用してこそ遺産としての「価値」が見出せるのではないでしょうか。

ちなみに、写真ではとても明るく見えますが、実際は裸電球が2個しかない真っ暗な空間。
画像処理ソフトでムリヤリ明るくしていますので、そこんとこヨロシク。
なお、写真技術はご容赦ください。

アクセス

JR大阪環状線・阪神なんば線 西九条駅から徒歩5分
※ 近隣に駐車場はありません。

次回予告

《 第 8 話 》俺が幻の鉄道線でつーんだつーんだするわけがない!

(参考文献)
・土木学会選奨土木遺産
・現地説明資料


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